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zoom RSS 新国立で「ラインの黄金」を観る

<<   作成日時 : 2015/10/06 18:56   >>

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 10月1日、新国立劇場で 2015-16シーズンのオープニング公演、新制作の「ラインの黄金」を観てきた。ワーグナーの楽劇「ニーベルングの指輪」4部作の序夜である。「ニーベルングの指輪」はワーグナーが26年にわたる歳月をかけて作曲した最大の傑作で、権力の象徴である黄金の指輪をめぐって、神々と人間が三世代に渡って繰り広げる壮大なスケールの物語である。今回のプロダクションは、ドイツの名演出家、ゲッツ・フリードリヒがヘルシンキで演出したもので、今回の序夜「ラインの黄金」に続き、2016年秋に第1夜「ワルキューレ」、2017年初夏に第2夜「ジークフリート」、そして同年秋に第3夜「神々の黄昏」で締めくくりになる3年がかりの上演である。昨シーズンから新国立劇場のオペラ芸術監督に就任した「ワーグナー指揮者」飯守泰次郎の意気込みが感じられる公演である。

「ラインの黄金」の『あらすじ』
 ライン河の底で3人の娘たちが黄金を護っている。黄金で作った指輪の持ち主には無限の権力が与えられるが、それをできるのは愛を断念した者だけである。ニーベルング族のアルべルヒが黄金を奪い、指輪を作る。一方、主神ヴォータンは巨人兄弟に城を作らせ、報酬としてアルべルヒの黄金を強奪して与えることに。絶望したアルべルヒは指輪に呪いをかける。財宝と指輪を得た巨人兄弟は呪いがたたり、弟が兄を殺してしまう。神々はヴァルハル城に入場するが、ローゲは神々の没落を予感する。

 今回の公演には世界に名だたるワーグナー歌手が集結したといえる。神々の長ヴォータンを歌うのは、ユッカ・ラジライネン、彼は09・10年新国立劇場の「指輪」でも同役を歌った(私はこの公演は観なかったが、ゲネプロに招かれて「神々の黄昏」だけ観ている)。アルべルヒ役にはワーグナー作品で近年脚光を浴びているというトーマス・ガゼリ(新国立劇場初登場)。ローゲ役は世界的なヘンデルテノールのステファン・グールド(私は新国立劇場2010公演で「トリスタンとイゾルデ」のトリスタン役を聴いている)。等々海外からの招聘歌手が計7名。そして国内勢では、巨人兄弟の兄ファーゾルト役に二期会の巨体妻屋秀和が出演している。
 ユッカ・ラジライネンはウィーン国立劇場、英国ロイヤルオペラ、バイロイト音楽祭などで活躍しており、さすが貫録のヴォータンを歌っていた。アルべルヒ役のトーマス・ガゼリも素晴らしかった。特に、黄金の指輪をヴォータンに奪われて呪いをかける場面での絶唱は鬼気迫る熱演であった。また、知恵の女神エルダを歌ったクリスタ・マイヤーの歌唱には引き込まれるような美しさがあった。
 そして、この夜私が最も感激したのは、火の神ローゲを歌ったステファン・グールドの延びのある美しい声である。彼もウィーン・バイロイト・メトロポリタンなどでワーグナー作品を中心に大活躍であるが、ローゲ役は今回がロールデビューだという。今回の「指輪」公演では、このローゲ役、第1夜「ワルキューレ」でジークムント役、第2夜「ジークフリート」と第3夜「神々の黄昏」ではジークフリート役と、4部作すべての公演に出演するとのことであり、彼の歌うジークフリートが今から楽しみである。
 名演出家フリードリヒは生涯に3回、「指輪」を演出している。最初がロンドンのロイヤルオペラ、次がベルリン、最後がヘルシンキである。1984年完成のベルリン版の「指輪」は、長いトンネルを設置した演出で「トンネル・リング」との異名を持ち、演出家フリードリヒの代名詞ともなる名演出といわれる。多くのオペラが制作されて10年ほどで寿命を迎える例が多い中で、このベルリン版の指輪「トンネル・リング」は30年を超えた現在も上演を続けている。予定では、2017年まで上演を続けるという。ベルリン・ドイツ・オペラの海外公演で、フリードリヒのベルリン版「指輪」は、ワシントンと日本の2都市、東京と横浜で上演されている。1987年10〜11月の3回に亘る日本公演は、チクルス(連続演奏)としての「ニーベルングの指輪」の日本初演だった。この公演が、わが国のワーグナーファンに多大な影響を与えたのは云うまでもないだろう。(なお、「ラインの黄金」の日本初演は1969年の二期会公演である。しかし、「ニーベルングの指輪」4部作の完結は22年後の1991年になった。)
 フリードリヒはもう1度「指輪」を演出した。ヘルシンキのフィンランド国立歌劇場で1996年から99年にかけて行われたが、フリードリヒは2000年に亡くなったので、このヘルシンキ版が彼の最後の仕上げとなった。今回の新国立劇場の「指輪」はこのヘルシンキのプロダクションである。
 ベルリン版の「トンネル・リング」は、(私は観ていないが) ダークで閉塞感の強い厳めしいものだという。それに比べて、このヘルシンキ版は、きわめて色彩的で、かつ抽象的である。私は「ニーベルングの指輪」のDVDを2組持っているが (1989〜90年収録のオットー・シェンク演出のメトロポリタンの公演と、1991〜92年収録のハリー・クプラー演出のバイロイト祝祭公演)、そのどちらと比べても、今回の公演は抽象性と色彩的な効果が強くなっている。抽象性は時代の推移による影響であろうが、色彩性はフィンランド国立歌劇場でフリードリヒと共に制作に携わった照明デザイナー、キンモ・ルステラによるものであろう。今回の公演にも来日し指揮した彼の照明が、美術担当のゴットフリート・ピルツの美的センスの舞台に輝きと色彩を与えた。使用する色の数も多く、スモークとの組み合わせも巧みだ。
 総じてこの「ラインの黄金」は、私はとてもエレガントな演出だいう感じを受けた。特に、第1場のライン河の川底の場面で、上部に横一線の青い光が6〜7本、これが美しく輝き、揺れ動いて水面を表す。また、第4場の最後、神々が城にかけられた虹を渡って行く場面。舞台は明るい上品な照明で輝き、神々の歩みと共に、とてもエレガントな舞台であった。管弦楽は飯守泰次郎指揮の東京フィルハーモニー交響楽団、メリハリのある演奏で素晴らしいオペラであった。
 なお、私が観たのは10月1日の公演初日。2階席正面に皇太子ご夫妻がみえており、ご入場ご退場の際には、満席の観客の拍手に応えて、にこやかに手を振っておられた。




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